前章では、「ライブハウスが盛り上がっていない」理由についてを、その場を構成する集合体から分析してみました。そして、現段階での仮定は、
・ライブハウスだからといって、すべての客が音楽に興味があってきているわけではない
・演奏側はそれを考慮して演奏はしない
・結果生じる表現者と受け手の間の隔たりが、つまらないライブを引き起こしている。
ということです。
それではここまでに話してきた演奏者と受信側の隔たりに対して、会場全体が盛り上がるライブをするにあたって、意識すべきところは何かという大切な点について述べたいと思います。
わたくし、これを一言で申し上げたいと思います。それは、
「ライブはプロレスである」
ということです。
プロレスはみなさんご覧になったことがあると思います。
裸のおっさんがパンツ一枚で投げ合ったり殴りあったりフォークを額に刺したりパイプ椅子で殴りあったりするアレです。
プロレスが、いわゆるプロレスファンを巻き込んで、特異な熱気を発するに至るのには理由があるのです。それはあれがどれだけ完成したエンタメであるかという点に尽きます。
考えても見てください。
友人とションベン横丁で飲んだ帰りに、道行くリーマンがやおら裸になってパンツ一枚で脳天杭打ちとかを始めたらどう思いますか?・・・まった、これは面白いな。例えを過ったわ。
再度。
たとえばプロレス会場に足を向け、席に着いたものの今日のカード(試合)の案内もなく、試合開始と思いきや、特に入場テーマも流れず、リングアナウンスもなく、レスラーの紹介もなく、「試合を始めます」とだけ言って、客にアピールもせず場外乱闘もせず、延々と試合をしてフツーに帰って行ったらどうですか?
面白いわけがないですよね。
プロレスというのは格闘技ですが、私たちはそこだけを見に来ているのではない、ということが肝心であり、またプロレス自体もそこを大いに理解していると思います。
団体間の衝突、裏切りと遺恨、ヒールとベビーフェイス、ミステリアスなマスクマン、垣間見えるストーリーとロマン、乱入、夢、一生懸命さ、汗、必殺技、そしてたどり着くチャンピオンへの道。
わたしたちはプロレスに、それだけのものを期待しています。そしてそれらすべてがこれ以上ない純然とした形で混じり合い、最高のエンターテイメントへと昇華したその時、わたしたちは周りも見えずに必死で声を枯らして叫んでいることでしょう。
そして音楽のライブもまさにそうあるべきなのです。
ミュージシャンとしてはライブハウスで音楽をするのは正しいのですが、客はまさに「そこだけを見に来ているのではない」のです。なぜなら聞くだけなら家でCDを聞けばいいのですから。
生身の人間が生身で繰り広げる何か、それはドラマでありロマンであり、すべからく観衆を巻き込むものであるべきだと思うのです。
お客さんから「なんかいいいよねー」と言ってもらうのを待つだけの、しょっぱい試合ではなく、それこそ場外乱闘でも起こして、観衆全体を巻き込むようなものこそがライブだと思うのです。
なぜならテレビでは場外乱闘に巻き込まれることはできないので、それはまさにライブのみで味わえる高揚感、臨場感であるからです。
ここまでいってもピンとこないプロレスを知らない方たちに、仕方ないのでちょっとアドバイスをしましょう。次のライブで参考にすることをお勧めします。
1.入場の際には荒縄を振り回しながら客席を一周、アテンションを向けさせる。その間にメンバーはセッティング
2.メンバー紹介は簡潔に誰が誰を憎んでいるのか、現在ベルト(バンド内イニシアチブ)を誰が持っているのか説明、また今日客席に他の団体(ほかのバンドの引き抜き)の刺客が来ていないかを匂わす
3.イントロのリフが始まった時点でゴングを待たずに歌いだす。
4.それに対してメンバーはチャイナシンバルなどで頭を叩きましょう、血が出るとなおよし。
5.おきて破りの逆ボーカル、としてギタリストなどが歌を歌ってみましょう。ライバルの必殺技を使うと盛り上がります。そこで喧嘩をしてギタリストは切れて退場しましょう。
6.その後の演奏がずたずたで何度も高音が出なかったり、チューニングが合わなくなった時は床に倒れこみましょう。きっと観客は声援を送ってくれます。声援が来たらじっくり溜めて後に挽回しましょう。
7.あらかじめ仕込んでおいた刺客に、「エーッ!オラーッ!こんなバンド潰してやんよ!」と乱入させましょう。
8.そして彼らに演奏させ、割としっかりと最後まで歌わせましょう。「結構うまくね?」さあ、客席がざわめいてきた、ピンチ!
9.彼らに勝つにはあの曲しか・・しかしギタリストはもうやめてしまって今はギターが足りない・・と!そこにハーレーに乗ったギタリストが客席から乱入!「待たせたな」戻ってきやがった!
10.再び一つになったところで最後の曲を演奏。刺客は「終わりじゃねえぞ!始まったんだぞ!?ア"ーッ!?」と捨て台詞で退場。ベルトを保持できたバンドへ客席からの大コール。
以上です。
これより面白いライブができる人がいたら教えてください。見に行きます。
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